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章別会話
誰がための力†
誰がための力†
オープニング†
- [フィル]
- よしっ…!
勝負あり、ですね!▼
- [ノア]
- 参った…
フィルさん、また強くなったね。▼
はじめて闘技場で
手合わせをしたときに比べて
その成長がよくわかる…▼
- [フィル]
- ありがとうございます、ノアどの!
見知らぬ異界にとまどいましたが
顔見知りがいて助かりました。▼
- [ノア]
- それはおれも同じだよ。
サウル神父やドロシーたちも
一緒だったのは心強い。▼
- [フィル]
- それで…その…
先ほどの手合わせなのですが。▼
ノアどの、もしかして左足の様子が
よくなかったのではありませんか?▼
- [ノア]
- 気づかれてしまったか…
情けない話だけど
戦場でくじいてしまってね。▼
サウル神父に杖で癒してもらったが
まだ本調子ではないようだ。▼
- [フィル]
- そうだったんですね…。
私はその弱点を攻めるようなことを…▼
- [ノア]
- フィルさん?▼
- [フィル]
- ノアどの、申し訳ありません!
こんな卑怯な勝ち方は
私たちの進むべき道ではありません!▼
私は…強くなってなどいません。
ただの未熟者です!▼
- [ノア]
- フィルさん!?
行ってしまった…▼
進むべき道か。
考えすぎるあまり
彼女の剣が曇らなければいいのだが…▼
- [サウル]
- おや、あれは?▼
- [フィル]
- ……▼
- [サウル]
- やあ、フィルさん。
どうかなさいましたか。▼
- [フィル]
- 神父さま…▼
- [サウル]
- いつもの明るさに
かげりが見えますね。
なにかお悩みですか?▼
- [フィル]
- え?
よ、よくわかりましたね。▼
- [サウル]
- 聖女エリミーヌとこの私も
麗しき花々が輝きをなくしてはいないか
常日頃から見守っているのです。▼
なにか悩みがありましたら
遠慮なくお話しください。▼
- [フィル]
- 実は…その…▼
私は…
母のような剣士になりたくて
剣を振り続けてきました。▼
でも、伯父上は言いました。
私が進むべき道は
母と同じ道ではないと。
- [サウル]
- ほう。あなたの伯父というと
あの高名な…?▼
- [フィル]
- はい。【剣聖】カレルです。
強さと優しさを兼ね備えた
私が最も尊敬する剣士です。▼
伯父上は、こうも言いました。
私が進むべき道は、伯父上の道とも違う。▼
私が進むべき道は
自身でこれから切り開く道だ、と。▼
- [サウル]
- つまり、あなたが悩まれているのは
その道のことでしょうか?▼
- [フィル]
- はい…。
先日、手合わせをした時、
ノアどのは足を負傷していて…▼
- [サウル]
- 私が癒して差し上げた
ノアさんの左足のことですね?▼
- [フィル]
- 相手の弱点を攻めるのは
戦いの定石であるということは
私にも理解できます。▼
ですが、非常な戦い方をしてまで
強くなる必要があるのか。▼
弱点を攻めるような戦い方が
私が進むべき道なのか。
そのことが頭から離れられないのです。▼
- [サウル]
- なるほど…。▼
癒し手である私でも
相手の弱点を突くのは
勝つためには必要なことと思えます。▼
ただ、それで良心が痛むなら
神に許しを乞うてはいかがですか?▼
もちろん、それ以外にも
心を守る方法はいくらでもあります。
よければもっと私が親身に相談を…▼
- [ドロシー]
- あーっ! 神父さま!!
まーた女の子にちょっかいかけて!▼
- [サウル]
- ドロシー?
違います、私は純粋に人助けを…▼
- [ドロシー]
- フィルさんも困ってるじゃないですか!▼
助けを必要とされている人は
アスク王国にたくさんいるので
そっちに行ってください!▼
- [サウル]
- どうして弓に手をかけるのでしょう?
わかった、わかりました!
では、フィルさん。私は失礼しますよ!▼
- [ドロシー]
- まったく、神父さまときたら。
目を離すと、いつもこうなんだから。▼
- [フィル]
- あ、あのっ
ドロシーさん、誤解なんです!▼
神父さまには真剣に
相談に乗っていただいていたというか…▼
- [ドロシー]
- そ、そうだったんですか!?
私の誤解だったんだ…▼
でも、これは神父さまの
日頃の行いのせいですから。
(暗転)
- [ドロシー]
- …なるほど。
お話はだいたいわかりました。▼
真面目なんですね、フィルさんは。
そんなことを気にするなんて。▼
- [フィル]
- 気にしすぎかもしれません。
でも、私には卑怯な戦い方に思えて
正々堂々とは言えない気がするのです。▼
- [ドロシー]
- でも、それって剣士ならではの
悩みかもしれませんね。▼
だって、弓使いの私は
敵に近寄られるとなにもできないけど
空を飛ぶ敵にはめっぽう強いんです。▼
常日頃から相手の弱点を突くような
戦い方をしているせいか
そんなふうに考えたことなかったです。▼
- [フィル]
- 自分が有利になる戦い方を
心がけている、ということですね。▼
- [ドロシー]
そう! そんな感じです!
それに先日の手合わせの話ですけど…▼
ノアさんも左足の調子が悪いのを
フィルさんに見抜かれることを
承知で戦われていたと思います。▼
フィルさんが弱点を突いて戦ったのは
手合わせで全力を尽くした証。▼
そのことはきっとノアさんにも
伝わっているのではないでしょうか。▼
- [フィル]
- つねに全力で剣を振ること。
それも私の道かもしれない…▼
ありがとうございます、ドロシーさん!
私の進むべき道が
見えたような気がします!▼
- [フィル]
- ノアどの!▼
- [ノア]
- おや、フィルさん。
ちょうどよかった。▼
調子も戻ったし
手合わせの相手が欲しいと
思っていたところなんだ。▼
- [フィル]
- そのことなのですが…先日の件、
卑怯と思われたのなら謝ります。
ですが、私は…▼
- [ノア]
- 卑怯だなんてとんでもない。
気にする必要なんてありませんよ。▼
戦場ではだれも手加減はしてくれない。
こちらの不調を見逃すような
お人好しはどこにもいないんだ。▼
むしろ、あの状態でフィルさんと戦えて
いい訓練になったよ。▼
- [フィル]
- ノアどの…▼
- [ノア]
- フィルさんが優しいのは知っている。
だけど、戦いにその優しさを
持ち込む必要はないよ。▼
つねに本気で一生懸命に。
自分を信じて剣の道を進めばいい。▼
- [フィル]
- は、はいっ!
ありがとうございます!
その言葉、励みにします!▼
さっそくですが、まずは一本
お手合わせをよろしいでしょうか。▼
- [ノア]
- ああ、こちらこそ
よろしく頼むよ!▼
(暗転)
- [ドロシー]
- ノアさんの調子、戻ったみたいですね。
フィルさんも剣に気迫が乗って
よい手合わせになってる気がします。▼
- [サウル]
- 信じる者は救われる。▼
もっとも、なにを信じるかは
それぞれの心の中にあるのです。
それぞれの形でね。▼
そして、神は
そのような人間を
信じておられるのです。▼
- [ドロシー]
- フィルさんは、ご自分の目と心で
信じる道を見つけられた…
ということですか?▼
- [サウル]
- そういうことですね。▼
それでも悩みが尽きないときは
この私が親身に
相談に乗れはいいだけのこと。▼
…ドロシー?
どうして弓に手をかけるのです?▼
- [ドロシー]
- しーんーぷーさーまー。
また、いかがわしいことを
考えているんじゃないですか?▼
- [サウル]
- 暴力はいけませんよ、ドロシー!
しかも、神父に弓を向けるなど
神は決して望んでは…▼
- [ドロシー]
- そう思うなら
エリミーヌ教が誤解されるような
行動はつつしんでください!▼
- [サウル]
- か、神よ!
私が無事に逃げおおせる道も
お示しください…▼
剣に生きる乙女 フィル†
- [フィル]
- フィヨルム王女、お忙しいところ
城を案内してくださり
ありがとうございます!▼
- [フィヨルム]
- 気になさらないでください。
私たちはこれからともに戦う
仲間なのですから。▼
召喚されたばかりで
わからないこともあるかと思います。
いつでも相談してくださいね。▼
- [フィル]
- お気遣い、ありがとうございます!
今後ともよろしくお願い…むむっ!?▼
- [フィヨルム]
- ど、どうかなさいましたか?▼
- [フィル]
- フィヨルム王女、聞こえませんか?
何やら地響きのような音が…
なにかがこちらに近づいています!▼
- [フィヨルム]
- い、言われてみれば。
地を揺るがすような音が
こちらに迫っているような…▼
- [バアトル]
- うおおおー、フィル!
アスク王国への到着、歓迎するぞ!
わが娘よぉぉぉーーー!▼
- [フィル]
- ち、父上!?
見切った…せやっ!▼
- [バアトル]
- むぅっ!? この父の抱擁を
こともなげにかわすとは!▼
- [フィル]
- 地響きの正体は
父上の足音でしたか…▼
それよりも…人前で
抱きつこうとするのはやめてください!▼
- [バアトル]
- わっはっは!
恥ずかしがることではないではないか!▼
それにしても今の身のこなし
ずいぶんと腕を上げたようだな?
まるで別人のようだったぞ!▼
- [フィル]
- 母上の背中を追って
度に出たあの日から…。▼
私はさまざまな人々と出会い
多くのことを学びました。▼
まだまだ未熟ではありますが
以前の私とは違います。▼
- [バアトル]
- おおおお…!
あの…フィルが…幼かった娘が…
こんなに立派になって! ずびぃ!▼
- [フィル]
- ち、父上っ! そんなに
仰々しく泣かないでください!
フィヨルム王女が驚かれますよ!▼
- [フィヨルム]
- 父と娘が異界で再会、
そこで知る娘の成長…
感動的です…▼
- [フィル]
- ええっ!?
フィヨルム王女も
まさかの父上寄り!▼
- [バアトル]
- まあ、それはともかく
再会できてうれしいぞ。我が娘よ。▼
そういえば先ほど
母の背中を追って
旅に出たと言っていたが…▼
- [フィル]
- は、はいっ! 母上の足跡を辿って
母上を知る方とお会いしたり…▼
私の剣の修行には
常に母上の存在がありました。▼
- [バアトル]
- そのことなのだが…
この世界、アスク王国にはカアラ…
お前の母も召喚されているのだ。▼
- [フィル]
- ……!?▼
- [フィル]
- …母上がアスク王国に?
幼い頃に死に別れた母上が
この世界にいらっしゃると?▼
- [バアトル]
- うむっ、そのとおりだ。
だが、この世界にいるカアラは
お前のことは知らぬだろう。▼
- [フィル]
- どういうことでしょうか?
母上が…娘の私を知らないなんて!▼
- [バアトル]
- 無理もない。
それには理由があるのだ。▼
この世界にいるカアラは
まだわしと一緒になる前の
若い頃のカアラだからな。▼
- [フィル]
- 若い頃の…母上!?▼
つまり、ここにいる母上は
将来、父上と結ばれることも
私を産むこともご存じないと?▼
- [バアトル]
- うむ、アスク王国にいるカアラは
まだお前の母ではない。▼
わしもまだ混乱しているが
つまりはそういうことなのだ。▼
- [フィル]
- ……▼
- [バアトル]
- フィル…
それでも母に会いたいか?▼
- [フィル]
- は、はい…。
母上はずっと私の憧れでした。▼
ずっと母上のような
強い剣士になりたかった。▼
そして、叶わぬ願いとは思いながら
もう一度会いたいと…▼
- [フィヨルム]
- フィルさんが剣を手にする
きっかけになられた方ですものね。
その気持ち、わかります。▼
- [バアトル]
- うむ…
もしお前が望むのであれば
会って話すがよい。▼
だが、ここにいる母は
お前を知らぬだろう。
それでも良いか?▼
- [フィル]
- もちろんです!
もちろん…ですが…
少しだけ考えさせてください…▼
- [フィル]
- フィヨルム王女…
お尋ねしてもよろしいですか?▼
- [フィヨルム]
- 私に答えられることでしたら
なんでもお教えしますよ。▼
- [フィル]
- ヴァイス・ブレイヴには私以外の私…
フィルの名前を持つ
剣士として生きた英雄がいるそうですね。▼
- [フィヨルム]
- はい。同じ名前、姿をした英雄でも
異界によって生き方は異なるそうです。▼
- [フィル]
- つまり、この世界にいる母上は
違う異界から来た可能性もあるのですよね?▼
- [フィヨルム]
- そうですね。
先日お会いしたバアトルさんも
別の異界から来たのかもしれません。▼
- [フィル]
- 父上はどこの異界でも
まったく変わらないと思います…▼
- [フィヨルム]
- え、ええ、そうですよね。▼
ですが、異界によって
英雄が辿る運命が変わるというのは
事実だと聞きました。▼
- [フィル]
- だとすると、アスク王国にいる母上は
父上を結ばれず、私の母にならない
可能性もあるのですよね?▼
この世界にいる母上の未来は
まだ決まっていない、と…▼
- [フィヨルム]
- …そ、そうですね。▼
- [フィル]
- 私、母上に会いたいです。
会っていろんな話がしたいし
いろんなことを教えてもらいたい。▼
でも、私が娘だと名乗り出てしまえば
母上の未来が変わってしまうかも…▼
フィヨルム王女…
私はやっぱり、母上と会わないほうが
よいのでしょうか。▼
- [フィヨルム]
- でしたら…
素性を隠して一人の剣士として
お会いしてみるのはいかがでしょうか?▼
- [フィル]
- それは、剣士として母上と…
手合わせするってことでしょうか?▼
いえ、そうですね。
…悪くないかもしれません。▼
私はずっと母上から
剣の手ほどきを受けられたら
どれほどよいかと思っていたのです。▼
- [フィヨルム]
- カアラさんとフィルさんは
お二人とも優れた剣士です。▼
ただ会って剣を交えるだけでも
なにか伝わるのがあるのでは?▼
- [フィル]
- フィヨルム王女、ありがとうございます!
私の剣が母上にどこまで通用するのか
試させてもらいます!▼
- [フィヨルム]
- カアラさんは森の奥で
剣を振られているはず…
あっ! いらっしゃいましたよ!▼
- [フィル]
- ……!?
あれが若かりし頃の母上!
なんと凛々しい…▼
- [フィヨルム]
- あの、フィルさん。
感激されるのはわかりますが…▼
- [フィル]
- そ、そうでした!
そこのお方! お頼み申します!▼
- [カアラ]
- ? 私に用か?
フィヨルム王女と…
はじめてみる顔だな。▼
- [フィル]
- わたしはそのっ…
な、名乗るほどの者では
ございません!▼
- [カアラ]
- そうか。
その名無しが私になんの用だ?▼
- [フィル]
- かの高名な【剣姫】カアラどのと
お見受けしました!▼
- [カアラ]
- 自分でそう名乗った覚えはないが…
いかにも私がカアラだ。▼
- [フィル]
- どうかこの若輩者に
一手ご指南いただきたい!▼
- [カアラ]
- 手合わせを望むというのか。
だが、いいのか?
今にも泣き出しそうではないか。▼
- [フィル]
- ち、違います! これは…
【剣姫】と手合わせできる
感激の武者震いです!▼
- [カアラ]
- 心が乱れている。
まずは深呼吸をしろ。
そして、剣を握り直すがいい。▼
- [フィル]
- すぅぅぅ…はぁぁっ…
震えが…止まった…▼
あ、ありがとうございます!
私がこれまで積み上げてきた
剣のすべてを出し切ります!▼
- [カアラ]
- 来るがいい。
悔いがないようにな。
(暗転)
- [フィル]
- はぁ、はぁ、はぁっ…
ありがとうございました!▼
- [カアラ]
- いい気迫だった。
いくつも死地を潜り抜けてきたのだろう。
剣から生き様が伝わってきた。▼
- [フィル]
- はぁ、はぁっ…
仲間に…恵まれていたのです。
だから今日まで…生きてこられました。▼
- [カアラ]
- …そうか。▼
しかし不思議だ。
はじめて手合わせをしたはずなのに
なぜか懐かしさを感じた。▼
- [フィル]
- ……!?
は、はは…う…くぅ…。▼
いえっ、なんでもありません!
今日はありがとうございました!▼
(暗転)
- [フィヨルム]
- いい手合わせでしたね。
見ている私も
息を呑んでしまいました。▼
- [フィル]
- 剣を交えて、すぐにわかりました。
私の剣は母上に遠く及びません。▼
そのことを教えてくれただけでも
会った甲斐がありました。
ありがとうございます、フィヨルム王女。▼
- [フィヨルム]
- お力になれたのなら幸いです。▼
- [フィル]
- 私、もっともっと強くなりたいです。
この世界にいる間にもっと成長して
その姿を…母上に見てほしい。▼
- [フィヨルム]
- 期待していますよ、フィルさん。
私も力添えさせてもらいますから。▼
- [フィル]
- 私は強くなります!
この剣ですべての困難を
乗り越えていけるように。▼
あの日、抱いた憧れを
この剣で実現してみせますから!▼
野にある聖者 サウル†
- [サウル]
- あなたのように可愛らしい人と
引き合わせてくださるとは…
おお、神よ。感謝します。▼
- [レギン]
- 神様? ニザヴェリルは
魔道科学が発達しているから
神様にはあんまり頼らないの。▼
- [サウル]
- そうなのですか?
ならば、これを機会に
エリミーヌ教に触れてみては?▼
祈りを捧げればすぐ願いが叶うと
奥様方にも大評判…
それがエリミーヌ教です。▼
- [レギン]
- えーっと…
なんだかよくわからないの。
間に合ってますなのー!▼
- [サウル]
- お待ちください、麗しの姫!
ふむ、不思議な鉄の馬に乗って
全力で立ち去られましたね。▼
- [アサマ]
- 逃げられてしまいましたねえ。
心中お察しいたします。▼
- [サウル]
- これはお恥ずかしいところを。
今日は運気がよくないようです。▼
- [アサマ]
- いやいや、なかなかどうして
面白いものを見せていただきました。▼
神の名の下に
女性の関心を引こうとは…
実に肝が据わられたお方だ。▼
- [サウル]
- それは…
褒めているわけではありませんよねえ。
失礼ですが、あなたは?▼
- [アサマ]
- 修験者のアサマと言います。
神仏に仕えるという意味では
同じような立場でしょうか。▼
まあ、私は神仏などという
胡散臭いものは信用していませんけど。▼
実は。ちょうどあなたを
探していたところだったんです。▼
- [サウル]
- 私…ですか? ふむ。▼
- [サウル]
- 私を探していたと?
さて、どのような要件でしょうか。▼
- [アサマ]
- 城内のいたるところに
貼ってあるこの紙。
あなたが貼られたものですよね?▼
『どんなケガでも安心!
エリミーヌ教を信じれば
神の御業でたちどころに快癒!』▼
『今なら格安で入信できます!
エリミーヌ教神父、サウルまで』▼
- [サウル]
- たしかに私が貼ったものですね。
なるほど、これを見たと…▼
あなたもヨーデルさまのように
お説教をなさるおつもりですか?▼
- [アサマ]
- 誰ですか、それ?
しかし、エリミーヌ様とやらは
すごいですねえ。▼
傷薬のように神の恩恵にあずかれるのなら
入信するのも悪くないと考えまして。
どうせなら楽に人を治したいですし。▼
- [サウル]
- ふむ、そういうことでしたか。
しかし、ひとつ大きな問題があります。▼
私は男性に教えを
説くつもりはないんですよ。▼
- [アサマ]
- ……▼
- [サウル]
- 私が受け持つ信徒は女性のみです。
そのような星の下に生まれたゆえ
仕方がないのです。では失礼。▼
- [アサマ]
- いやいやいや。目の前にいる
迷える者を見捨てるのですか、神父様。▼
- [サウル]
- 迷える者と言うか…
あなたからは邪気に似た気配を
感じるのですが?▼
そういえば異界には性別が異なる英雄も
いらっしゃると聞きます。▼
女性のアサマどのが希望されるなら
あらためて入信を考えましょう。
というわけで、わたしはそろそろ…▼
- [アサマ]
- 私が男性であったとしても
信徒が増えることは
喜ばしいことでは?▼
まさか自分の都合で
信徒を選り好みされるとは…▼
もしかして、あなたは
神父でありながら
神を信じておられぬのではありませんか?▼
- [サウル]
- なんと言われようと、私は神父です。
神を信じていないなど
そのようなことはありませんよ。▼
聖女エリミーヌのもたらす光によって
人々は笑い、未来への希望を持つのです。▼
- [アサマ]
- でしたら、私もその輪に
加えてくれればいいんですよ。▼
- [サウル]
- かつて、聖女エリミーヌは
このようにおっしゃられました。▼
神の意のままに動く人間は
意思なき人形と変わりません、と。▼
よい言葉です。
私はこの言葉に
大きな感銘を受けました。▼
- [アサマ]
- だから自分の欲望の赴くまま
女性信徒ばかりを増やしている、と。
なんとも物は言いようですねえ。▼
- [サウル]
- あなたこそ神仏の徒でありながら
気やすく宗旨替えを望むとは
信心に欠けるのではないですか?▼
- [アサマ]
- 私は神社の子に生まれたから
そのまま僧侶になっただけですよ。
神仏を信じているわけではありません。▼
- [サウル]
- 笑顔で言い切りましたね。▼
- [アサマ]
- それに、信仰の深さはどうあれ
知識があれば人々に教えは説けます。▼
説法をしていると、私を見る
人々の目が次第に輝いていくんですよ。▼
そうやって人心を掌握することは
実に愉快です。心が高揚しますねえ。▼
- [サウル]
- なんと恐れ多いことを…
アサマどのは一番神職に
就いてはいけない方では?▼
- [アサマ]
- それはお互い様というもの。
で、どうですか?▼
私もエリミーヌ教とやらに入信して
楽して人を癒せそうですかね?▼
- [サウル]
- それは…▼
- [マリナス]
- おおっ、癒しの力を持つお二人が
ちょうどよいところに!▼
- [サウル]
- マリナスどの?
どうなされました、血相を変えて。▼
- [マリナス]
- 西の山のふもとにある村が盗賊に襲われて
ケガ人が出ているようなのですじゃ!▼
今から馬車で向かうところでして
お二人も手を貸してはくださらんか?▼
- [サウル]
- 一刻を争うようですね。
私でよろしければ手を貸しましょう。▼
- [アサマ]
- 私も同行しましょう。
すぐに馬車を出してもらえますか?▼
- [マリナス]
- ありがたいですじゃ!
それでは、すぐに出発しますぞ!▼
- [サウル]
- さあ、これでもう大丈夫です。
あとはしばらく安静にしてください。▼
次の方…ああ、これは痛かったでしょう?
聖女エリミーヌの御業にて
すぐに癒して差し上げましょう。▼
…これで一段落ですね。
アサマどの、そちらはいかがですか?▼
- [カムイ]
- ……?
俺はマリナスさんの護衛のカムイだ。
坊さんなら向こうへ行ったぞ。▼
- [サウル]
- おっと、これは失礼。
アサマどのに似ていたので…▼
…男性の顔に興味がないので
うっかり間違えたとは言えませんね…▼
(暗転)
- [サウル]
- アサマどの、こちらでしたか。▼
- [アサマ]
- お疲れさまでした、神父様。
まあ、お疲れさまと言ってほしいのは
私のほうですけどね。▼
- [サウル]
- はは、お疲れさまでした。▼
- [アサマ]
- サウル神父の癒しの力、驚きました。▼
あれだけのケガ人を手際よく
次から次へと治療されるとは。▼
神をないがしろにしていても
加護は受けられるものなのですねえ。▼
- [サウル]
- ないがしろになんてしていませんよ。
前にも言ったでしょう。▼
神の意のままに動く人間は
意思なき人形と変わりません。▼
私は私なりの考えで神に接しているだけで
ちゃんと敬っておりますよ。▼
- [アサマ]
- 物は言いよう、というわけですか。▼
- [サウル]
- あなたこそ破戒僧でありながら
神仏の加護を正しく
享受されているようですね。▼
あなたの癒しの力を受けた方たちは
笑顔で目を輝かせていましたよ。
それこそ、仏様を見るような顔でね。▼
- [アサマ]
- 神仏がいようがいまいが
目の前の問題を片付けるのは
我々人間の仕事です。▼
神仏の教えで
人々を安心させられるのなら
遠慮なく使わせてもらうだけですよ。▼
- [サウル]
- 人々の心を安心させる手段があるなら
それを利用しない手はない、と。▼
私も同じ考えで聖女エリミーヌの
お力をお借りしているだけです。
まあ、ご婦人相手に限った話ですが…▼
- [アサマ]
- やれやれ。私を聖女エリミーヌの
信徒にしてくれるつもりはなさそうですね。
あと、私を破戒僧と呼びましたが…▼
信心の深さはさておき
戒律を破るわけではありませんので
そこはお間違えなきよう。▼
- [サウル]
- おっと、これは失礼。▼
そういえばあなたは
白夜王国の第一王女に
仕えているそうじゃないですか。▼
- [アサマ]
- ええ、なりゆきで
引き入られただけですけどね。▼
- [サウル]
- いい機会です。ぜひ王女様にも
聖女エリミーヌの素晴らしさを
知って頂きたいのですが…▼
アサマどの、お茶の席を設けるよう
取り計らっていただけないでしょうか?▼
- [アサマ]
- 神の意のままに動く人間は
意思なき人形と変わらないと
仰ってましたけど…▼
あなたはもう少し
聖女エリミーヌの意もくんで
動いたほうがいいと思いますよ?▼
心美しき弓使い ドロシー†
- [ドロシー]
- アスク王国にいる異界の英雄は
みんな素敵な人たちばかり。
はぁ、私は…▼
- [ヴィオール]
- おお! 野に咲く可憐な花よ。
憂いを帯びたその横顔も実に魅力的だ。▼
ぜひ私の庭園に
その彩りを添えてみないかね?
貴族的に、たおやかにね。▼
- [ドロシー]
- ……▼
- [ヴィオール]
- むう。どうやら彼女の耳には
私の囁きが届いていないようだ。▼
- [ドロシー]
- え、ええっ!?
今、私に話しかけてたんですか?
ごめんなさい、てっきり独り言かと。▼
- [ヴィオール]
- おお、一拍遅れて届いたのか?
そのとおり。野に咲く美しい花を見て
貴族的に挨拶させてもらったのさ。▼
- [ドロシー]
- 美しい…花? 私が?
それってどういう意味ですか?▼
- [ヴィオール]
- 少し驚かせてしまったかな。
無論、君を花に例えたまでさ。
伝わりにくかったかね?▼
- [ドロシー]
- いえ、褒めてくれたのはわかりますけど。
ヴァイス・ブレイヴには綺麗な人が
たくさんいるのにおかしいなって。▼
- [ヴィオール]
- 素直に思ったことを述べたまでだよ。
しかし、君は自分が放つ輝きを
もっと誇ってもよいのでは?▼
- [ドロシー]
- もしかして…
私を褒め殺して高価なものでも
売りつけようとしています?▼
- [ヴィオール]
- そ、そのようなことは断じてない!
私はただ君の魅力を…▼
- [セルジュ]
- はーい、そこまでにしましょうね。
ヴィオールさん!▼
- [ヴィオール]
- セ、セルジュくんか。違うのだよ、これは…
私はただ貴族的に礼節を持って
異界の英雄と親交をとだね…▼
- [セルジュ]
- だれかれ構わず迷惑をかけるつもりなら
ミネルヴァちゃんに嚙みつかせますわよ?▼
- [ヴィオール]
- う、うむ。満面の笑みで恐ろしい
物言いをするのは遠慮してほしいね。▼
仕方ない。今日は失礼するとしよう。
ではまた、可憐に野に咲く花よ。▼
- [セルジュ]
- はいはい、行きますよ。
それでは失礼しますね。▼
- [ドロシー]
- あ、はい、どうも…▼
- [ヴィオール]
- 首根っこを強く引っぱるのは
やめてくれたまえ、セルジュくん!
もう少し優しく…ぐえっ!?▼
- [ドロシー]
- 行っちゃった…
変な人たちだったな。▼
- [ドロシー]
- こないだの人…
セルジュさんって言ったっけ。
素敵な人だったなあ。▼
あの人、ヴィオールとかいう人に
お仕えする従者なのかな。
お話してみたいなあ。▼
- [セルジュ]
- よかった、やっと見つけたわ。▼
- [ドロシー]
- あっ! セ、セルジュさん!?
もう会えちゃった?▼
- [セルジュ]
- 先日、ヴィオールさんが迷惑をかけたこと
きちんと謝っておきたくて。
本当にごめんなさいね。▼
- [ドロシー]
- そ、そんな、大丈夫ですよ!
別に気にしてませんから…。▼
- [セルジュ]
- ありがとう。
そう言ってもらえると助かるわ。
私はセルジュ。▼
- [ドロシー]
- 私はエリミーヌ教団のドロシーです。
セルジュさんとお話ししたかったから
会えてうれしいです。▼
- [セルジュ]
- それは奇遇ね。
聞きたいことでもあったのかしら?▼
- [ドロシー]
- その…
セルジュさんのご主人様も
女の子にちょっかい出す人なのかなって。▼
- [セルジュ]
- よくわかったわね。
もしかして、あなたも?▼
- [ドロシー]
- そうなんです!
エリミーヌ教の神父さま、サウルさんの
護衛を任されているんですけど…▼
神父さまは目を離すと
すぐに女の子をお茶に誘ってしまって
本当に困ってるんです!▼
- [セルジュ]
- そうそう、目を離せないのよねえ。
気を抜くと女性に吸い寄せられるから
方々に迷惑をかけっぱなしで…▼
- [ドロシー]
- 本当! 気が休まる暇もなくて!▼
- [セルジュ]
- うふふっ。私たち
お互い似たような立場みたいね。▼
- [ドロシー]
- そうみたいですね。
ふふっ、ヴァイス・ブレイヴで
悩みを話せる人が出来てよかったです!▼
- [ドロシー]
- セルジュさんとお買い物、
ご一緒できてうれしいです!▼
- [セルジュ]
- ううん。買い出しなんかに
付き合わせちゃってごめんなさいね。▼
- [ドロシー]
- …こうして二人で歩くと
みんなセルジュさんを見てるなあ…▼
…セルジュさん、華があって
とっても素敵だもの…▼
- [セルジュ]
- ドロシー、どうかしたのかしら?▼
- [ドロシー]
- えっ! 私って二人でいると
セルジュさんの従者みたいだなぁって。▼
- [セルジュ]
- そんなことはないと思うけど…▼
- [ドロシー]
- ううん。セルジュさんは
歩いているだけで絵になるし
私って見てのとおり、地味だから…▼
- [セルジュ]
- おかしなことを言うのね。
だってあなたは、英雄として認められ
アスク王国に召喚されたわけでしょう?▼
そんな人生を送っている人が
地味なんてことあるのかしら。▼
- [ドロシー]
- そ、そうでしょうか?▼
- [セルジュ]
- 世が世ならドロシーの英雄譚が
描かれたっておかしくはないわ。▼
それくらい、あなたは
輝かしい人生を歩んでいると思うの。▼
- [ドロシー]
- セルジュさん、優しいから
そう言って私を元気づけようと…▼
- [セルジュ]
- ふふ、私はお世辞なんか言わないわよ。▼
あなたの弓の腕前は素晴らしいし
努力を怠ることもない。
英雄として誰もが認める存在よ。▼
胸を張って生きれば
あなたの輝きはもっともっと増すはずだわ。▼
- [ドロシー]
- な、なんだか元気が出てきました。
ありがとうございます、セルジュさん!▼
ちょっと照れくさいですけど
気持ちが楽になった気がします。▼
- [ヴィオール]
- セルジュくん。
君はいつも後ろをついてくるね。
それは別に構わないのだが。▼
まるで監視されているみたいで
落ち着かない…というのが
正直な気持ちだよ。▼
- [セルジュ]
- まるでではなく、監視してるんです。
目を離すと、すぐにフラフラと
女性に声を掛けはじめますからね。▼
- [ヴィオール]
- うーん、君はもう少し
私を信用すべきだと思うよ。
おや? あのお嬢さんは…▼
- [ドロシー]
- ふんふん~♪▼
- [セルジュ]
- ドロシーじゃないですか。▼
- [ヴィオール]
- ほう。買い物中のようだが
ずいぶんと楽しそうな様子ではないか。
この前とは、まるで別人だ。▼
- [セルジュ]
- そうですね。店主やお客さんとも
気さくにお話ししているみたいです。
ふふっ、素敵な笑顔ですね。▼
- [ヴィオール]
- どうだい?
私の見立てに間違いなかっただろう。▼
野に咲く花には、野に咲く花の魅力がある。
どうやら彼女も気が付いたみたいだね。
いつか満開の花になった頃には…▼
- [セルジュ]
- それ以上、口を滑らせないほうがいいかと。
でないと、ミネルヴァちゃんを
噛みつかせることになりますので。▼
- [ヴィオール]
- う、うむ、肝に銘じておこう…▼
- [セルジュ]
- ふふ、頑張ってねドロシー。
あなたのその輝きがこれからも
進むべき道を照らしてくれるはずよ。▼
(暗転)
- [ドロシー]
- くしゅん!▼
んー、どうしたんだろう?
誰かが私のこと、噂してるのかな。▼
あっ! もしかしたら
神父さまがまた悪さをしているのかも。▼
こうしちゃいられない!
エリミーヌ教の評判が落ちないよう
私が頑張らなきゃ!▼
流浪の傭兵騎士 ノア†
- [ノア]
- ちょっとお尋ねしたい。
城の武器庫はこの先だろうか?▼
- [エイル]
- ええ。廊下の突当りを右に行けば
衛兵が立っているわ。▼
- [ノア]
- この国に来て日が浅く
まだ不慣れなゆえ…
では、失礼します。▼
- [エイル]
- あら、これは落とし物…?
あなたのものでは?▼
- [ノア]
- ……!
確かにおれのです。
ありがとうございます。▼
申し遅れました。
イリア傭兵騎士団のノアと言います。▼
- [エイル]
- 私はエイル。死の国…
いえ、生の国ユーミルの王女よ。▼
- [ノア]
- エイル王女。
非礼の数々、どうかご容赦を。▼
- [エイル]
- 気にすることはないわ。
私たちは…ヴァイス・ブレイヴで
ともに戦う仲間なのだから。▼
- [ノア]
- 恐れ入ります。
おれはこの異界に来る前は
リキア同盟軍に与して戦っておりました。▼
- [エイル]
- リキア同盟軍…
ロイやリリーナがいたところね。
ところで、あなたが落としたものは?▼
- [ノア]
- ああ、これは手紙です。
もっとも、なにも書かれていない
白紙ですが。▼
- [エイル]
- 白紙の…手紙。
中身はこれから書かれるのね。▼
- [ノア]
- ……▼
その予定はありません。
今のところ、手紙を出すような
相手もいませんし…▼
これからも、そんな相手は
いないほうがいいと思います。▼
では、失礼します。▼
- [エイル]
- ……。
出す相手もいない、
白紙の手紙…?▼
- [エイル]
- 敵の数が多いわね。
このままでは…▼
- [ノア]
- エイル王女!
加勢させてもらいます。▼
- [エイル]
- ノア?
あなたもこの戦場にいたのね。▼
- [ノア]
- おれが突破口を開きます。
あとに続いてください。▼
- [エイル]
- 申し出はありがたいけど
この敵の数では…▼
- [ノア]
- 東の一角を見てください。
鎧が新品で隊列もバラバラ。
新兵ばかりのあそこを突きましょう。▼
- [エイル]
- わかったわ。行きましょう。▼
(暗転)
- [エイル]
- さっきは助かったわ。
あなたの読みは…
当たっていたようね。▼
- [ノア]
- 戦場で長く経験を積めば
あれくらいは見えるようになります。▼
それに、礼は必要ありません。
戦うのがおれの…仕事ですから。▼
- [エイル]
- あなたはきっと
ここよりも過酷な戦場を…
たくさん知っているのね?▼
- [ノア]
- …そうですね。
ヴァイス・ブレイヴの戦いは
いくらかマシです。▼
同じ傭兵同士が敵味方に分かれて
戦うこともありませんから。▼
- [エイル]
- ……。
あなたのいた世界では、違うの?▼
- [ノア]
- おれのいたエレブ大陸では
同じ傭兵団でも雇い主が違えば
戦場で敵同士。▼
さっきまで仲良く飯を食っていた戦友が
明日は襲いかかってくるかもしれない。
そんなことが日常茶飯事でした。▼
- [エイル]
- それが傭兵の…生き方なのね。▼
- [ノア]
- おれたちを雇っている
貴族たちはよく言っていました。▼
「イリアの傭兵は死を売って生きている」
「血の匂いに群がり。
死肉をあさるカラス」だと。▼
- [エイル]
- ……▼
- [ノア]
- すいません。お疲れのところ
つまらない話を聞かせてしまって…▼
おれは武器の補充がありますので
失礼します。▼
- [エイル]
- 死を売って生きる…
死と隣り合わせで生き続ける人生。
まるで、心が死んでいくような生き方…▼
- [エイル]
- あなたが落とした、
あの白紙の手紙は…▼
- [ノア]
- あれは…
遺書のようなものなのです。▼
- [エイル]
- 遺書…
生者に向けて託す、最後の手紙…▼
- [ノア]
- イリア傭兵騎士団には
戦闘に参加しない天馬の伝令がいます。▼
もし誰かが命を落としたら
そいつの手紙を届けてくれるんです。▼
家族や恋人…
親しい友人や恩人たちに。▼
- [エイル]
- ……▼
- [ノア]
- おれは…誰かに手紙を
贈ろうとは思いません。▼
手紙を読んだあと、そこに残るのは
大切な人を失った悲しみだけ。▼
おれは誰かにそういう
思いをしてほしくないんです…▼
- [エイル]
- だから手紙は白紙だったのね?▼
それがあなたにとっての
死との向き合い方…▼
- [ノア]
- ……▼
- [エイル]
- 死は逃れられないもの。
すぐ間近にあるもの。▼
死への覚悟を持ち続ける
イリア傭兵騎士団の人たちも…
それは同じことでしょうね。▼
いつなんどき、死の魔手が
その首を絞め上げるかわからない日々。▼
あなたたちにとって
手紙を持ち続けることは
生きている証…。▼
ある意味、手紙は
魂のようなものなのでしょうね。▼
- [ノア]
- そういう考え方をしたことは
ありませんでしたが…
似ているかもしれませんね。▼
手紙が失われるとき
命もまた失われる…▼
- [ノア]
- しかし、この手紙は
もう無用の長物かもしれませんね。▼
もしここで、おれが死んだとしても
イリアの伝令が、この世界まで
手紙を回収に来るとは思えませんし。▼
- [エイル]
- 心配しなくても…大丈夫よ。▼
アルフォンス王子やシャロン王女
アンナ隊長や
エクラ…▼
あなたが命を落とさずに済むよう
皆が力を貸してくれるから。
もちろん、この私も…▼
- [ノア]
- エイル王女…▼
- [エイル]
- この世界では…
死を売って生きる必要はないわ。▼
むしろ、自分以外の誰かの
生をすくい上げるために
あなたの力を使ってほしいの。▼
- [ノア]
- 命を育むための戦いですか。
生きるために他者の命を奪ってきた
おれに、その資格があるのでしょうか。▼
- [エイル]
- あなたに助けてもらった命は
あなたにその資格があるかどうかを
問うことはないと思うわ。▼
- [ノア]
- 結果で示していけばいい…
というわけですか。▼
なるほど。それはひとつの
傭兵の生き方に違いありませんね。▼
アスク王国でのおれは
血肉に群がるカラスではなく
一人の英雄として戦う。▼
アルフォンス王子たちが
そうお望みならば…
おれは仕事をやり遂げるまでです。▼
- [エイル]
- アスク王国であなたから…
その手紙が離れることのないことを
祈っているわ。▼
- [ノア]
- この手紙は白紙のまま
元の世界に持ち帰ります。
その先のことは考えません。▼
一人の英雄として目の前の戦いに
全力を尽くし、生き抜くことを…
この胸に誓いましょう。▼
コメント†
Last-modified: 2023-08-26 (土) 20:57:33