目次
・いつもの恋人のための褒め方
・その日の恋人のための口説き方
・真実の愛は幾つあっても構わない
・聖セスリーンの愛の花冠を贈ろう
・二人きりの時の振る舞いと夜明けの迎え方
(廃棄された日付とセテスの署名が入っている。
どうやら大修道院の書庫の蔵書だったようだが、
目次以外は見当たらない。)
……の司祭である私が調査した結果を……
………………が持った状態で遺産から紋章石を外すと、
遺産は微小な動きを止めた。付け直すと、再び……
……紋章石から遺産に、何らかの力が働いているのは
間違いない。そして、その力が働くきっかけとなるのが
人の中に宿る紋章の力……
……の構造から推測されるのは、巨大な動物、特に
飛竜に類する………………だが、強度は飛竜の骨の
比ではない。るつぼ鋼ですら負ける硬さであり、
武器の素材として最適かつ………………
……生息する……理解しがたいが、可能性……
まさか、女神の………………
……十傑以外の英雄の遺産が発見された。十傑では……
主に授けられた者が他にいたのか、あるいは、英雄の
遺産は主から授かったものではないという恐ろしい……
また、同じ紋章石を………………多くの仮説が……
……いったい何が真実だというのだろうか
暦の謎 第二篇
帝国暦が制定されて久しいが、それ以前の暦では、
1年は守護の節から始まり、星辰の節で終わって
いたことがわかっている。
十二節は存在せず、「節」の代わりに「月」という
呼称を用いていたという。
守護の節が1月、天馬の節が2月……というように、
数字が1ずつ増えていき、星辰の節である12月で
1年が終わる。風情はないが、合理的な呼称である
ことは間違いない。
古き暦の起源はわかっていない。もし辿れるなら、
おそらくは神代に答えを求める羽目になるだろう。
途方に暮れるほど昔から暦は存在した。
わかるのはその事実のみである。
暦の改変は世に混乱を招く。にもかかわらず、
なぜアドラステアの初代皇帝ヴィルヘルムは、
有用な古き暦を廃して帝国暦を制定したのか。
それには幾つかの理由が考えられる。
一、セイロス教の影響
節の名称やその背景となる文献は、セイロス教の教義に
基づいていたり、聖人に縁のあるものであったりする。
暦をセイロスの教えに即したものにすることで、教義や
行事の浸透を図ったり、セイロス教の正統性を強めたり
する狙いがあったことは、想像に難くない。
これは、アドラステア帝国が建国時からセイロス教会と
密接な関係にあったことを示す証拠でもある。
あるいは主が暦を変えることを求め、それを預言者
セイロスから伝えられたヴィルヘルムが、
制定するに至ったのかもしれない。
一、権威付け
暦とは時であり、暦の制定とは時の流れの支配である。
建国後、瞬く間に勢力を伸長させたアドラステアは
帝国暦を制定、遡って建国を元年とした。フォドラ
統一を前に、自国の権威を高める意味合いがあったろう
し、新たな時代を創る誓であったのかもしれない。
古の神が住まいいしはずの地ティニスにて、
ついに神ならざるものが目覚める。
異形の巨躯が、世界を水の底に沈めるために蘇る。
すべての人の子らに滅びを。
すべての獣、すべての鳥、すべての魚に救いを。
命の血を流しすぎた人の子らに、報復を。
世界が水の底に沈む前に、神ならざるものを討つ。
そのために人の子らは光の柱を地に立てた。
ティニスも、マールスも、セプテンも、リウムも、
すべてが破壊し尽くされ、大地が消えた。
それでも神ならざるものは立っていた。
絶望という名の洪水が、世界を覆った。
人の子らは地の底へと逃げた。
神ならざるものの目の届かぬところへ。
太陽の光の届かぬところへ。
絶望の水が入り込まぬ所へ。
やがて獣の支配する地上への、
神ならざるものへの復讐を誓って。
第七歌
……若き皇帝リュカイオン3世の結婚を祝う宴は、結局
満ちた月が半分になるまで続いた。給仕たちは城じゅう
を駆け回って、黄金の杯に酒を注いで回る。ボラマスの
地から運び込まれた上等なバクスの味に、野獣の爪や牙
に引き裂かれる北の剣闘士たちの悲鳴と血の匂いが……
……宴席の卓に所狭しと並べられた料理は、いずれも贅
を尽くした素晴らしいものばかりだった。大皿には四聖
人に見立てられた料理が顔を揃え、わたしたちの食指が
伸びるのを待ち構えている。大地を司る聖キッホルの皿
には、グロンダーズ産の上等な麦を使った麺包が。聖セ
スリーンの皿には、かつて彼女が好んだという魚を……
……聖者セイロスに扮した道化師が、ネメシスに扮した
罪人の首を一薙ぎで刎ね落とすと、観衆は皆、熱狂と興
奮の歓声を上げた! 聖者を捕まえて抱きすくめるヴィ
ルヘルム帝の姿をじっと眺めていた少年は、おもむろに
わたしに手招きし、この耳に唇を寄せて愛を囁く。舞台
上で、ヴィルヘルム帝がセイロスにそうしたように……
(廃棄された日付とセテスの署名が入っている。
アドラステア帝国を題材とした小説のようだが、
大部分が痛んでおり、これ以上は読めそうにない)
親愛なる……へ
君の言う通りだった。
彼は家を割ることに躊躇いはないらしい。
しかも、割った領地を引っ提げて王国への鞍替えまで
考えているようだ。
この同盟内で結束をしなければならない時期に、
家督争いどころか他国を巻き込むとは……
私には彼は正気とは思えない。
彼が大紋章、君が小紋章とはいえ、
君に爵位を継がせようとしたお父君の判断は、
やはり正しかったのだ。
ところで、君は私のことはどうするつもりだね。
彼から度重なる求婚の手紙が来る。
確かにあの男は君と同じ顔だが、
あれと結ばれるなど絶対にごめんだ。
迎えに来るつもりがないなら、こちらから行くぞ。
いつ父の気が変わるかもわからないからな。
孤月の節が終わることにはデアドラを発つ。
ちゃんと準備しておいてくれ。
花冠の節に婚儀を行いたいんだ。なぜって?
私とて女だ、花冠の花嫁に憧れくらいある。
いいか、わかったな。頼んだぞ
リーガン公爵家次女 クローディア
(書名と本の内容が一致しない。
どうやら偽物の表紙が継ぎ接いで作られている。
何かの目録のようにも見えるが……)
・眼鏡を元に作られた、遠くを見るための道具
眼鏡の鏡部分を二枚重ね合わせることで、
遥か遠くをはっきりと見られるようになる。
大司教は以下の三つの危険性を挙げ、作成を禁じた。
「敵陣の把握による戦争の激化」「遠方からの狙撃が容
易に」「天の観察による主の神秘性の減退」
・燃える黒水
ファーガス北部で発見された、粘ついた黒色の液体
激しく燃え、悪臭と有毒な空気を発する。
大司教は以下の危険性を挙げ、邪なるものとして利用を
禁じた。「誤って使用しての事故死」「魔法を使えない
者の戦術的利用」「争奪による対立の発生」
・金属製の字型を使用した書物の制作機
当初、木版に代わる有用な発明として歓迎されたが、
熟考を重ねた結果、多くの理由により禁忌となった。
大司教は以下の理由を特に挙げた。「誤った情報や悪意
のある噂が流布される危険」「字の読めない平民にとっ
て無益」「教会同士の対立が激化する恐れ」
・人体の解剖、妄りな頭や胸への切開
医学的に役立つとの主張が根強くあったが、遺体を辱め
る行為が死者への冒涜であり、白魔法の発展により解決
できるとして禁忌となった。
枢機卿の一人が、信仰を必要とする白魔法に医学が勝る
ことがあれば、教会の地盤が揺らぐと強固に主張した。
……月15日 アリルの森
ネメシス王が討たれて早数ヵ月、戦況は悪化の一途を
辿っている。我が友ダフネルも命を落としたと聞いた。
狂信者の軍団が、我ら氏長の首を狙ってやってくる。
セイロスの作り出した濁流に、我らは呑まれるのみだ。
長きにわたる生も、ついに終わるか…
……月2日 イーハ平原
どうにか逃げ延びてきたが、ここまでのようだ。
我が一族の大半はすでに帝国に降り、
驚くべきことに命を保証されていると聞いた。
だが、私は別だ。この命と神器とを奪われる。
息子よ、娘よ、すまない……
……月5日 ……
セイロスは、なぜ我々をこうも憎んでいるのだ。
ネメシス王はいったい、セイロスに何をしたのか。
奴の話に乗ったのが、間違いであったか?
だが、それも遥か昔のこと…
この体が朽ちる前に、邪悪な……
(手記はぼろぼろで、これ以上読めそうな部分はない)
(本の間に、古びた紙切れが挟まっている。
相当古いもののようだ)
・ヘラジカの肉
特に、アルビネヘラジカのものが望ましい。
手に入らない場合には、牛や馬の肉でも代用できるが、
独特の風味を再現することが難しくなる。
・メガミノツカイ
あらかじめ身をさばき、皮をはいでおくこと。
・ザナドの宝果
手に入りにくいものではあるが、欠かせない。
どうしても手に入らなければ、ボアフルーツで代用。
・各種調味料、香辛料
アドラステア産の岩塩、ファーガス産の香草、
レスター産の蜂蜜を揃えるのが望ましい。
これは式典で、新皇帝に饗される一皿である。
どの食材も大変珍しく、高価なものだからといって
くれぐれも、調理中につまみ食いなどしないように!
(火にくべられた何かの報告書の束のようだ。
一部分だけ燃え残ったようで読むことができる)
第十八項の五
……ファーガスの乱。ルーグの挙兵には幾つかの疑問点
がある。帝国に気取られず兵を集められた理由。彼らが
使用した、英雄の遺産に類似する謎の武具の入手方法。
ルーグを助け、その軍略のすべてを差配したという軍師
パーンの正体。彼もまたフォドラの闇に蠢き、主に……
第二十二項の二
……ファーガス国王クラウス1世は暗殺された、という
のが騎士団暗部の見方である。後継者を定めず、3人の
王子に領土を三分割するという狂気に満ちた遺書が偽物
であるというのは、誰でも考えることだ。その目的はレ
スター地方を加え帝国を上回る勢いを見せるファ……
第四十九項の十八
……件の問題である“ダスカーの悲劇”後、西方教会内
で中央協会を強く非難する者が増加しているという。中
にはダスカーの一件そのものを騎士団暗部の仕業と主張
する者たちまでおり、教義の正統性を巡った対立では済
まなくなっている。そのうちガスパール城主の子で……
第五十一項の六
……レスターの盟主、リーガン公オズワルドの嫡男一家
が事故死。先代の公爵に続いての事件であり、騎士団で
もグロスタール伯の指示ではとの疑いが持たれた。だが
伯の仕業とすると、余りに露骨だ。一時開戦も危ぶまれ
たものの、オズワルド公が病床に倒れたことで事態……